第51章 真実を
「貴女について調べた資料を見せたり、組織がどれほど残酷なものか知って頂けたら・・・怖がってくれると思ったんですが、ね」
そう言って向けられた視線に、心臓が跳ねて。
「・・・私が透さんから離れるように仕向けた・・・ってことですか?」
「そうなりますね」
・・・それは。
「何の為・・・ですか?」
包まれている手の上に、自身の手を重ねて。
少し迷いのような沈黙を流し、険しい表情を見せた彼は、数十秒後にようやく口を開いた。
「・・・僕は立場上、貴女を最前線で守る事ができないこともある。実際、ひなたさんを危険な目にも合わせた」
確かに、そうかもしれないが・・・。
「だからFBIに接触させて、証人保護プログラムを受けてもらおうと思ったんです」
・・・だからあの時、ジョディさんに私を合わせたのか。
でもそのついでに赤井秀一についての情報を集める辺り、抜かりはないんだな、と彼らしさを感じて。
「頑固な貴女ですから、一筋縄ではいかないと思っていましたが・・・ここまでとはね」
そうまで言われてしまうと、逆に申し訳無さが強くなってきて。
でも、これでハッキリ答えが出せた。
「・・・じゃあ、私は証人保護プログラムを受けなくて良いんですね」
目を丸くした彼が、私に視線を向けて。
話を聞いていたか、とでも言いたげなその表情に、冗談でも何でもないと視線で伝えた。
「・・・守ってくれないんですか?」
少し図々しく、そう尋ねて。
本当はそんなこと求めていない。
無理なことも分かっている。
彼には今まで通り・・・時々でも良い。
会って話ができるだけで・・・それだけで良い。
「・・・なんて、冗だ・・・ん・・・っ」
言いかけている最中、体は一瞬にしてソファーへと押し付けられて。
反射的に瞑った目をゆっくり開けると、そこには苦しそうな彼の表情があった。