第51章 真実を
「・・・・・・っ」
ショック、と言えばそれもある。
どうして言ってくれなかったのか。
どうして黙ったまま傍に置いたのか。
「貴女からアイツの名前を聞いた時は正直驚きました。まさか組織の人間の車のことを喋っているとは・・・思いませんでしたけどね」
思い出し笑いをするように、でもそれは少し困ったようにも見える笑いを小さく漏らしながら、初めて会った時のことを話した。
「・・・じゃあ、私の依頼を受けたのは・・・」
「貴女の保護を兼ねた探り屋、とでも言いましょうか」
そう、か・・・。
でも探られる程の情報は持ち合わせていなかったけれど。
「ポアロで働いているのは・・・?」
「毛利探偵に近付く為のカモフラージュです。もっとも、今興味があるのは彼に付いている少年ですけどね」
・・・コナンくんか。
確かにそれは私も同意見だ。
毛利探偵の推理を見た訳ではないが、コナンくんの推理力や洞察力や、先を読む力は・・・単なる小学生のものではない気がする。
「では、ここは・・・」
「貴女の為に急遽作ったものです」
・・・私の為?
「組織のことについて知っている以上、貴女を公安の力で守らないといけないと判断しました。その為には僕の監視下に置いておくのが一番だと思いまして」
なるほど・・・バーボンとしてではなく、公安の警察官として私を見張っていた、ということか。
「ポアロに誘ったのも、同じ理由ですか?」
「ええ、一人になる時間をなるべく減らした方が良いと思い、そうさせて頂きました」
・・・ということは、まさかとは思うけど。
「梓さんは・・・無関係ですよね?」
「勿論です」
一瞬入った力が、透さんの返答によって一気に抜けて。
今は、良かった、の一言しか出てこなかった。
これ以上、あんな組織の被害に合う人が出ると思うと・・・考えただけで吐き気がする。