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【安室夢】恋愛ミルクティー【名探偵コナン】

第51章 真実を




「お待たせしました」

ものの数分で戻ってきた透さんが、道沿いに車を止めて。
足早に乗り込むと、シートベルトを付けてその手を膝の上に置いた。

車内は終始無言。
寧ろその方が有難かった。

今下手に話をしてしまえば・・・あの時や、さっきのように逃げてしまいそうだったから。

事務所に着くと、いつものように近くで車を止められ私だけ先に降りて。
駐車場へと向かう透さんを見送ってから事務所の二階へとゆっくり上がった。

手荷物が何も無いのを見てか、透さんから車内で預かった事務所の鍵を鍵穴に差し込み解錠すると、重い手を動かして扉を開いた。

「・・・・・・」

懐かしくさえ思えてしまうその部屋に、おさまっていた涙がまた溢れてきそうで。

部屋の隅に作られた私の服置き場へと吸い寄せられるように向かうと、一つの引き出しを開けた。

透さんが用意してくれた服達がそこには詰められていて。

一日もここに住むことは無く、これも役目を終えるんだと思うと、やっぱり涙は堪えきれなかった。

「・・・透、さん」

ポツリと彼の名前を呼びながら引き出しを閉めた。

また泣いていると目の腫れが酷くなってしまう。
そう思いながらも、勝手に溢れてくるそれは自分ではどうしようもなくて。

「また泣いているんですか?」
「!」

背後から伸びてきた手が、優しく頬を包んで。

いつも彼は気配が無い・・・気付けば近くにいる。

「・・・泣いてません」

これは無意識に流れているものだから、と昨日と同じ言い訳を心の中でしながら目を擦った。

その手を透さんに止められ視線が交わると、心臓が大きく跳ねて。

「もっと目が腫れてしまいますよ」

そう言って瞼に唇を落とされた。

心地好い、その感覚に細かいことはどうでも良くなって。
相変わらず単純な人間だと、思いの他自分を冷静に見ることができれば、まだ大丈夫だ、と自分に言い聞かせた。



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