第6章 赤い人
「連絡・・・どうしよう」
カバンの奥から少しクシャッとなったメモを見つけ出し、手で軽く広げる。
消えていてほしかった、見間違いであってほしかったあの文章は消えずに残っていて。
また胸騒ぎを覚える。安室さんは悪い人ではない。そう言いきれる自身はあった。
とにかく安室さんに言えない以上、彼に聞くしかない。そう決心してコナンくんにメールを送った。
『メモ読みました。理由を教えて。協力するかはそれ次第です。』
とても小学生に送る内容ではないと思ったけれど。少し震える指で送信ボタンを押す。
大きな事を終えたようで一旦肩の力が抜ける。それと共に大きなため息も出た。
数分後、メールの着信音が鳴り響き、スマホを手に取る。コナンくんからだ。
『分かった。今日の15時半にポアロの前で待ち合わせできる?』
なんだか返ってきた文面が彼のものではない気がした。はっきりとは言えないこの違和感。その違和感を抱えつつも、返信ボタンを押す。
『分かりました、その時間ポアロで待ってます。』
それから彼の返信はなかった。不安が無くなるどころかどんどん大きくなる。それ以上にモヤモヤとした感情も増えた。
とにかく彼と話して理由を聞かないと。
今考えられることはそれだけだった。
私は約束の時間より少し早く、ポアロに向かった。こっそり窓から中を除くが、中には梓さんとお客さんだけで。
今日は探偵業だと安室さんも言っていたし、いないのは当たり前のことなのにどこか期待していた自分がいる。今日を境に暫く休むのかな・・・なんて考えていると。
「あれ、如月さん?早くない?」
「あ、おかえり。コナンくん」
目の前にいるのはいつものコナンくんで。
メールで感じた違和感は気のせいだったのか、とすら思う。
「ちょっと待ってて、すぐ準備するから」
そう言って毛利探偵事務所へ続く階段を駆け上がっていった。そういえば毛利探偵に私は会ったことがない。安室さんにお世話になっているのだし、いつかは挨拶しておかなければ・・・と1人考えに耽っていると。
「お待たせ」
数十秒で彼が帰ってくる。待つどころか考える時間さえなかったけど、なんて思う。
「会わせたい人がいるんだ」
彼が私に会わせたい人。少し考えて1人だけ思い浮かんだ。