第50章 真相と
「昨日、何故付けていなかったか、ですか?」
それ以外に何の質問があるのかと彼を睨めば、嘲笑うように口角を上げられた。
「別に普段から声を変えているとは、一言も言っていませんよ」
・・・確かにそうだ。
以前彼に問い詰めた時には、探偵には危険がどうのだと言われた。
何かあった時の為に付けている・・・なんて言うことだってできる。
「昨日はたまたまつけ忘れていただけですよ。まあ、付けていなかったことで、彼に変な誤解をされずに済みましたけど」
・・・実は全て分かっていた上で外していたんじゃないかとすら思う。
彼らの作戦がどういう物だったかは知らないが、少なくとも透さんが来ることは予想していたようだし。
「そういえばコナンくん、行く所があったんじゃないですか?」
思い出したように昴さんがコナンくんへ尋ねると、彼もまた何かに気付いたようにソファーから飛び降りて。
「そうだった、忘れてた」
可愛らしく、うっかりしていたと言わんばかりに頭を掻くと、何故か私の目の前まで走ってきた。
「如月さんも一緒に行かない?」
「え・・・っ」
それは外に・・・ということ?
何も解決していない上、証人保護プログラムの話が改めて上がるような、こんな状況で・・・?
「い、良いんですか・・・?」
コナンくんが誘うのだから、昴さんもダメとは言わないだろうが。
きっと彼が誘うのには理由があるんだろうし。
それでも恐る恐る、昴さんに視線を向けながら問いかけて。
「お気を付けて」
そう一言だけ告げられると、コナンくんに手を取られた。
早く早くと手を引く彼に、前のめりになりながら付いて行き部屋を出て。
荷物は大して無いのだが、何も持つことを許されないまま、彼は足早に玄関へと向かって行った。
「ちょっと会いたい人がいるんだ」
工藤邸を後にするなり彼がそう告げて。