第6章 赤い人
「あ、そうでした」
そう言うなり安室さんは後ろの座席に体を向け、何かを引っ張り上げた。
「これひなたさんにプレゼントです」
わざわざ車から降りて、手渡されたのは1つの紙袋。中には1つ箱が入っている。
「ど、どうして・・・」
プレゼントを貰うような日でもないし、貰うようなことをした覚えはない。受け取るのに戸惑っていると。
「たまたまとあるお店で見かけたんですが、ひなたさんの雰囲気に合っていると思いまして」
またそういうことを言う。そうやって何人の女性を落としてきたのだろう。でも素直に嬉しくて。
「僕からの一方的なプレゼントとして受け取ってください」
「・・・ありがとうございます」
そんな物を受け取れる立場ではないけれど。それでもその気持ちが嬉しくて。ありがたく受け取ることにした。
「よく見える位置に置いてくださいね」
そう言い残していつものように颯爽と去っていった。受け取った紙袋を落とさないようにギュッと抱え込みながら、急いで部屋へ戻った。
帰っていつもの帰宅の言葉を言うなり、紙袋から箱を取り出して早速開ける。
中から出てきたのはアンティーク風の小さな振り子時計。細かな彫り細工が綺麗で思わず見入ってしまう。
「・・・綺麗」
時計の時間はきちんと合わせてあって。その辺りが少し安室さんらしくて笑ってしまう。
一定のリズムで音を立てながら揺れる振り子を見ているとなんだか落ち着く気がした。
「・・・お兄ちゃん、素敵な物頂いたよ」
そう写真の彼に話しかけて、時計を側に置いた。安室さんの言う通り、部屋のどこからでも見えるこの位置に。
兄のことを思うとまた泣きそうになるが、それをグッと堪えて、少し腫れてしまった目を濡らしたタオルで冷やした。
「・・・さてと」
目と気持ちを少し落ち着かせたところで、広げたままのパーツを片付けようと取り掛かる。
「いや・・・ちょっと触ってからにしよう」
見てしまうとどうしても何か作ってしまいたくなる。これだから片付かないんだよな、と思いながらも作業を進めた。
そういえばコナン君が持っていたあのバッジ、構造はどうなっていたのだろう。私にも作れるだろうか・・・
なんて思っていると思い出すあのメモの存在。