第50章 真相と
その言葉を受け入れられなくて。
忘れるつもりはないし、そんなことできるはずもない。
けれど、彼はそう望んでいて。
「・・・透、さん・・・ッ」
今、溢れているものは・・・涙だ。
それは、私の悲しさが形になったもので。
「・・・っ、ぁ・・・」
全身の力が抜けて、その場に座り混んだ。
両手で顔を覆い、声を押し殺して泣いた。
明確に彼から拒まれた事は、私の中に大きな傷を作った。
想像以上に抉られたその傷は、治ることはないだろう。
それでも私は・・・彼を忘れることは無いと思う。
「・・・っ!」
玄関先で座り込む私に、優しくブランケットが掛けられた。
そんなことをする人物はただ一人しかいなくて。
「冷えますよ」
きっと昴さんも聞いていた。
でも何も聞かず、そうとだけ言われて。
それが今の私には心底ありがたい。
「・・・昴さん・・・っ」
彼の顔を見た瞬間、涙腺は壊れてしまったように涙を溢れさせた。
きっと情けない顔。
そう思っても、自分を綺麗に保つことなんてできなかった。
「すばる、さん・・・昴さん・・・ッ!!」
彼に縋り付き、何度も名前を読んでは泣き叫んだ。
透さんに拒まれることが、こんなにも辛いものだったなんて。
怖いとすら思ったのに。
偽りだと分かっていたのに。
殺されかけたのに。
安室透という人はいないと・・・知っていたのに。
きっと心のどこかにあった期待の感情が、想像よりも大きかったんだ。
昴さんを代わりに頼りとするわけではないが、今は・・・今だけは、誰かが傍にいて欲しい。
それがたまたま、昴さんだっただけ。
・・・それだけ。
ーーー
「紅茶入れ直しましたので、どうぞ」
「・・・ありがとうございます」
暫く玄関で縋り泣いた後、いつもの部屋へと戻った。
暫く部屋を出ていた昴さんが戻ってくると、その手には紅茶の入ったカップを乗せたトレーがあって。