第49章 緋色の
「あっ・・・赤井が・・・ッ!?」
・・・赤井?
確かにそう聞こえた。
でも、赤井秀一は・・・ここにいるはずじゃ・・・。
そう思って昴さんに目を向けると、彼は透さんには目もくれず、テレビに映るマカデミー賞の様子を伺っていて。
「何!?赤井が拳銃を発砲!?それで、追跡は!」
拳銃・・・。
その言葉で彼に・・・透さんに向けられた銃口を思い出した。
その記憶は、自分でそうであっても良いと望んだことなのに、いまでは恐怖となって埋め込まれていた。
「・・・大丈夫ですよ」
「!」
無意識に息が乱れ始めた私へ、視線を合わせないように昴さんが小声で話して。
「僕がついていますから」
優しく話す彼の言葉には、強みしか感じられなかった、が。
それは、沖矢昴として?
それとも・・・赤井秀一として・・・?
「何でもいい!動ける車があるのなら、奴を追え!今逃したら、今度はどこに雲隠れするか・・・」
声を荒らげて電話の相手に怒鳴る彼は、やはり私の知る彼ではない。
私には赤井秀一を追う理由としてあんなことを言っていたけれど・・・本当の目的はやはりスパイだった赤井秀一を・・・。
そう考えている最中、昴さんがわざとらしく咳をしては、透さんの注意を引いた。
「少々静かにしてもらえますか?今、この家の家主が、大変な賞を受賞して、スピーチをする所なんですから」
・・・さっきまで見向きもしなかったくせに。
そう思いながらも、きちんと背後から流れる声にも耳を傾けていたことを知って。
「・・・会ったことは、ありませんけどね」
その言葉に、数時間前に彼から言われた言葉を思い出した。
工藤氏がここへ来たことは・・・秘密。
もしかしてそれは、透さんに向けて言っていた言葉・・・?
だとすると昴さんは・・・今日ここに、透さんが来ることを予想していた?
・・・そうすれば、ここに隠された監視カメラの存在にだって説明はつく・・・が。