第49章 緋色の
「それはチョーカー型変声機。首に巻けば、喉の振動を利用して、自在に声が変えられて、ストーカーの迷惑電話に役立ち・・・そう」
・・・やはり、彼は生きていた。
それも、私のすぐ近くで。
頑なに私に組織について話さなかったのは・・・彼がFBIだったから。
彼もまた・・・私や透さんと同じ・・・
・・・嘘吐き、か。
「大きさは丁度、そのハイネックで・・・」
そう言いながら、透さんが昴さんに近付いていって。
危ない。
そう思っても、何もかもすでに遅くて。
「隠れるくらいなんだよ!」
透さんが昴さんのハイネックに指を掛けて。
やめて、と彼の手を止めたかった。
ただそれは・・・彼の味方でありたいという自分を敵に回すようで。
でも、昴さんを危険な目にもあわせたくない。
私は・・・今、誰の味方でありたいのか。
答えは出ないまま、透さんの手はハイネックを剥ぐように動かされた。
ただそれを・・・見ることしかできなかった。
「!!」
「・・・!?」
無い。
昼間には確認した・・・あのチョーカーが。
彼の首元には何もつけられていなくて。
予想を裏切られた透さんは、酷く驚いた様子で数歩後ずさった。
彼のそんな様子を見るのは初めてで。
本当に彼が、焦っている様子。
数秒間の沈黙の後、部屋に着信音が鳴り響いた。それは透さんが先程、机に置いたスマホからで。
ただ、それを置いた当人は唖然としたまま気付いていない様子で。
「あの・・・電話、鳴ってますけど?」
「あ・・・あぁ・・・」
昴さんの呼びかけで、ようやくそれに気付いた透さんが、慌ててスマホを手に取った。
「どうした?遅かったな・・・」
電話に出ると、そう電話の相手に伝えて。
あまり聞いたことの無い、彼の口調。
まだ私の知らない・・・彼の姿。
「えっ・・・!?」
電話の相手が何を言ったのかは知らないが、驚愕の声を上げる透さんの表情や様子から、酷い焦りが感じられた。