第49章 緋色の
「・・・連絡待ちです」
そう言って、机の上に透さんがスマホを置いた。
「現在、私の連れがあなたのお仲間を拘束すべく追跡中。流石の貴方も、お仲間の生死がかかれば、素直になってくれると思いまして」
「・・・っ」
仲間・・・生死?
もしかして・・・コナンくん・・・?
透さんの言葉で一瞬にして血の気が引いた。
「でも、できれば連絡が来る前に、そのマスクを取ってくれませんかねぇ。沖矢昴さん」
そこにいるのは確実に安室透ではない。
私の知っている、優しい透さんでは・・・ない。
・・・でも、バーボンでもない気がする。
彼は・・・一体、誰なの?
「いや・・・」
紅茶を一口飲むと、透さんの声は更に威圧感を増したものと変化して。
「FBI捜査官。・・・赤井・・・秀一・・・!」
マスク・・・赤井、秀一?
昴さんが・・・赤井秀一・・・?
・・・嘘、だってミステリートレインで彼は・・・。
・・・いや、あの時の彼と昴さんを同時に見たわけではない。
「君がそれを望むのなら、仕方ない」
その言葉に思わず昴さんへ視線が向けられた。
まさか・・・本当に彼が・・・?
「ふん・・・、それはありがたい」
勝ち誇ったように透さんがソファーの腰掛けに腕をかけて。
昴さんは、彼の要望に対して了承の言葉を口にすると、ゆっくり右手を顔の左側の方へと伸ばしていった。
「・・・なんのつもりだ?」
数秒後、透さんが発した言葉と同じ言葉を、心の中で呟いた。
昴さんが手にしていたのは、さっきまで口を覆っていたマスクで。
「少々風邪気味なので、マスクをしてもいいですか?君にうつすといけない」
咳をしてはそう答える彼に、何故こんなときにも挑発的なのかとこっちの方が不安になって。
「そのマスクじゃない・・・その変装を解けと言っているんだ!赤井秀一!」
珍しく声を荒らげる透さんに、ビクッと肩を震わせて。
痛いほどに・・・殺意のようなものが感じられる。