第49章 緋色の
「監視役がいたんですか」
昴さんの返答と私の心の声が一致をする。
でも大きな疑問は残っている。
組織の目が光っている中で、どうやってそんなフリをしたのか・・・。
「ええ。監視役の男は、まんまと騙されたってわけですよ。なにしろ、撃たれた男は頭から血を噴いて倒れたんですから」
「頭から血を?」
だったら尚更・・・。
「だがそれもフェイク」
私の考えを真っ向否定するように、透さんが言葉を付け足した。
「撃たれた男はいつもニット帽を被っていましたから・・・」
・・・ニット帽。
確かに写真の彼は被っていたが・・・。
ミステリートレインで会ったと思われる彼はニット帽ではない帽子を被っていた気がする。
・・・それだけで判断するのは浅はかだが、やはり別人なんだろうか。
「この近所にはMI6も顔負けの発明品を作っている博士がいるそうじゃないですか。彼に頼めば、空砲に合わせてニット帽から血糊が吹き出す仕掛けぐらい、簡単に作れそうだ」
透さんが阿笠博士のことを言っていることはすぐに分かったが、問題はそこではなくて・・・彼も組織に目をつけられていたとしたら・・・。
・・・それも私の、せいだったら。
「じゃあ、そのグルの女に、頭に向けて空砲を撃ってくれと頼んでいたんですね?」
「いや、頭を撃てと命じたのは監視役の男。予想していたんですよ。監視役の男が拳銃でとどめを刺す際に、必ずそうすると」
・・・予想していた?
もしかして、水無怜奈が組織に戻る・・・その前から?
そんな・・・馬鹿な。
最初から、自分がそうやって殺されると・・・予想していたの?
「なかなかやるじゃないですか、その男。まるでスパイ小説の主人公のようだ」
「だが、この計画を企てたのは別の人物。そう、別人の人物・・・」
強調するように言葉を重ねると、その笑みは深くなって。