第49章 緋色の
「ひなたさんは気付いたようですね?」
「!!」
突然名前を呼ばれ、肩をビクッと震わせながら注意を戻されて。
・・・いや、きっと昴さんだって気付いているはずだが・・・益々分からなくなった。
何故この話を昴さんに・・・?
組織について調べていることを、突き止めにきた・・・?
「更に付け加えると、その痩せた男は自身の車で頭を撃ち抜いて拳銃自殺をしている」
「・・・つまり、来葉峠で撃たれた彼と、その痩せた男の死体摩り替えトリック・・・ということですか?」
・・・そうか、答えは最初に透さんが言っていた。
どうしてもっと早く気付けなかったんだろう。
「ええ、タイミング良く入れ替わったんでしょうね」
「なるほど、なかなか興味深いミステリーですが・・・その打たれたフリをした男、その後、どうやってその場から立ち去ったんですか?」
確かに。そもそも、赤井秀一が撃たれたのは、偶然水無怜奈にそこへ呼び出されたからだ。
裏で手を組んでいたとはいえ、水無怜奈が赤井秀一を撃ったということは、他に組織の人間が近くに居たんだろうし。
「それを答える前に、テレビを消してくれませんか?大事な話をしているんですから」
そう言われてテレビに自然と視線が向いて。
画面の向こう側には、つい数時間前まで一緒にいた工藤優作氏がチラリと映っているのが見えた。
・・・本当に間に合っている。
信じられないが、それは事実として突きつけられた。
「いいじゃないですか。気になるんですよ、マカデミー賞。それで、その男はどうやって?」
少しの間の後、透さんが呆れたように小さなため息を小さくつくと、言葉は続けられた。
「その男を撃った女とグルだったんでしょうから、恐らくその女の車にこっそり乗り込んで逃げたんでしょうね。離れた場所でその様子を見ていた、監視役の男の目を盗んでね」
・・・やはり、その場に別の組織の人間も居たんだ、と思うと同時に、水無怜奈がスパイだとバレたのは・・・きっと私のせいなんだ、と自分を責めた。