第49章 緋色の
透さんの話すその三人の話・・・以前ジョディさんから教えてもらった、杯戸中央病院での出来事に似ている。
・・・いや、恐らくその話をしているんだ。
だとしたら、痩せた男というのは・・・。
「誰だと思います?」
まるで獲物を追い詰める狩人のような目つき。
その彼の姿から、何故か目が離せなくて。
「二番目の、痩せた男ですね」
即座に答えた昴さんに、透さんに捕らわれていた視線は、いとも簡単に昴さんへと向けられた。
「なぜなら、最初の太った男が拾った時に不着した指紋は、綺麗に拭き取られてしまったから。脂まみれの携帯を、後の二人に拾わせるのは気が引けるでしょうしね」
私の考えがあっていれば、昴さんの話は合っていて。
ただ、彼もきっとこの話があの時のことだと知っていて・・・気づいてもいるはず。
その上での・・・答えたのだろうか。
「ええ・・・」
膝に肘をつき、両手の甲に顔を乗せながら透さんが笑みを浮かべる。
「でも、痩せた男の後に、問題の殺された男もその携帯を手にしてたんですよね?だったらその男の指紋も・・・」
そう、例えその痩せた男・・・恐らく、楠田陸道が触っていたとしても、赤井秀一が触れれば指紋は付くはず。
「付かない工夫をしていたとしたら?」
私たちの疑問を読み取ってか、昴さんの言葉を待たずして透さんが言葉を挟んだ。
「恐らくその男はこうなることを見越して、あらかじめ指先にコーティングをしていたんですよ」
指先に・・・コーティング・・・?
確かにそうすれば付かないだろうが・・・そもそも、何故そんなことをする必要があるのか。
指紋を付けないようにしてまで、楠田の指紋を残しておきたかった?
何の為に?
・・・楠田の指紋を、自分の物と偽りたかった?
それこそ、何の・・・為、に・・・・・・。
「・・・!」
そういえば、彼は・・・楠田陸道は頭を撃ち抜いて拳銃自殺したと・・・。そして赤井秀一も同じく頭を撃ち抜かれている。
そして楠田陸道の死体は見つかっていない。
・・・まさか。