第49章 緋色の
震えを抑え込みながら、昴さんに言われた通り紅茶を準備して。
小さなピッチャーにミルクを入れ、砂糖と共にトレーへと乗せた。
戻りたくない気持ちを押し殺し、もう一度大きく深呼吸をしてから、それらを透さんと昴さんが待つ部屋へと運んだ。
「・・・お待たせしました」
部屋に入り、トレーをテーブルへと静かに置いて。
私の定位置となっていたソファーには透さんが腰掛けているのを見ると、どうすれば良いかと無言で昴さんに尋ねた。
それを確認した彼は、透さんの向かい側に座るその席の隣を、何故かポンポンと軽く数回叩いて。
「・・・・・・」
何も言うなと言いたげな表情に、言葉は自然と飲み込まれた。
・・・空いている一人がけのソファーだってあるのに。
そうも思ったが、ただそれは、いつもの必要以上に接触してくる昴さんの行動とは違い、彼の言う『守る』という行為に近い気がして。
透さんには視線を向けないことを保ったまま、昴さんの隣へと腰掛けた。
「・・・それで、話というのは?」
紅茶のカップを手に取りながら、昴さんがそう切り出して。
・・・そう、話次第では・・・恐らく、お互い命すら危ない。
そう身構えながらも、透さんを見ることはできなかった。
「・・・ミステリーはお好きですか?」
いきなりそう切り出した透さんの声に、必死に耳だけは傾けた。
「ええ、まあ」
「では、まずその話から」
・・・なんだろう。
一体これから何が始まると言うのだろう。
透さんが私について一切触れないことを考えると、今日は本当に昴さんに用事があって来たのだろうか。
「まあ、単純な死体摩り替えトリックですけどね」
「ほぉー、ミステリーの定番ですね」
どこか楽しそうにも聞こえる二人の会話が、信じられなくて。
ただただ、時間が過ぎるのを待つことしかできなかった。