第49章 緋色の
「ええ、貴方一人なら。申し訳ありませんが、外で待たれているお連れの方達は御遠慮願います」
昴さんにそう言われて初めて気が付いた。
透さんの隙間から門の方へと目を向けると、確かに暗闇の中で何人かの気配を感じて。
・・・組織の、人間?
だとしたら、私がここにいることがバレたということ・・・?
それは・・・危険、どころの話ではなくなってくる。
「お出しするティーカップの数が足りそうにないので」
「気にしないでください。彼らは外で待つのが好きなので。でも、あなたの返答次第で・・・」
言葉を続けようとする透さんの目つきが変わって。
背筋にゾクッと悪寒が走った。
「全員お邪魔する羽目になるかもしれませんけどね」
透さんだけでもこの状況は厄介なのに・・・更に組織の人間がいるとすると、あまりにも分が悪過ぎる。
ただただ、不安な視線を昴さんに向けるしかなくて。
「そうならないように気を付けますよ」
そう言って何故かすんなり室内へと促す昴さんに、疑問ばかり生まれた。
もしかして、これが彼の言っていた餌・・・ということ?
にしてはこちらの状況が悪過ぎる気がして。
何も解決しないまま私の中の疑問や不満は溜まっていく一方だった。
「どうぞ、適当に座っていてください」
「・・・ありがとう」
いつもの部屋へと昴さんが透さんを案内して。
その間もずっと彼は私の肩を掴み、傍から離れなかった。
その動作や仕草が、不思議といつもの彼ではないように思えて。
「ひなたさん。すみませんが、三人分の紅茶の用意をお願いしてよろしいですか?」
「え・・・?は、はい・・・」
あくまでも透さんを客人として招くようで。
そして、三人分と言われたことに、私もその話に参加しなければならないことを察した。
透さんからの視線は気にしないフリをして、あまり目を合わせず、逃げるように部屋を出た。
キッチンに入ると、小刻みに震える体を抑え込むように、両腕を掴んで。
乱れた呼吸は深呼吸で無理矢理抑え込んだが、冷や汗と胸のざわつきだけは、どうやっても自分で治めることはできなかった。
・・・会いたかったはずなのに。
どうして。
どうして?
・・・どうして。
こんなに彼が怖いんだろう。