第48章 不可欠
「・・・っ」
視線を逸らすと、無言の肯定を感じ取ったのか、肩を掴む手は取り払ってくれて。
部屋に閉じ込めた理由も、ここに留める理由も分からないまま、ただ彼の言う通りに動くしかなくて。
正直、悔しくてたまらない。
ーーー
「・・・ご馳走様でした」
あれからお互い会話は殆どないまま、得体の知れない視線を感じながら同じ部屋で時間を過ごした。
夜ご飯はなぜか彼の作り置きで。
今までそんなことは無かったのに。
小さな違和感を度々感じながらも、食器の片付けを終えていつもの部屋へと戻った。
「・・・?」
普段テレビをつけることは無く、つけてもニュースばかり見ている昴さんが、珍しく別の番組見ていて。
「マカデミー賞、一緒に見ませんか?」
そういえば工藤氏がテレビを、と言っていたっけ。
さすがにこの家の家主が出るテレビ、それもマカデミー賞となれば見ることがあるのか、と思いながらもそれより気になることがあって。
「どうしたんですか?そのマスク・・・」
さっきまで付けていなかったのに。
彼の口はその白いマスクで覆われていて。
「少し、風邪を引きかけているようでして」
軽く咳をしながらそう返事をされる。
風邪・・・そういえば、以前私が引いた時は彼が看病をしてくれたな、と思い出して。
「・・・薬とか無いんですか?」
「心配してくれるんですか」
またあの笑顔。
「違います、昴さんを看病するのが嫌なんです」
「それは残念」
昴さんになら本音が出せるのに、なんて思いながら、薬は飲みましたよ、と彼が付け加えたのを確認すると、少しは安心できて。
本当は少し心配でもあるが、それ以上に困る。
今、彼に倒れてもらっては・・・。
「・・・!」
突然、インターホンの音が部屋に鳴り響いて。
思わず玄関に続くドアへと視線を向けた。
「コナンくんでしょうかね、出て頂けますか?」
昴さんにそう言われたからには動くしかなくて。
渋々、言われた通りに玄関へと足早に向かい、ドアノブへと手を掛けた。