第48章 不可欠
「・・・ッ!」
突然開いたドアに、尖っていた神経が反応し瞬時に視線を向けた。
「・・・どうかされましたか?」
戻ってきた昴さんが不思議そうな表情で私を見たのを確認すると、どこか安堵を感じて。
「い、いえ・・・」
何も無かったかのように振る舞いながら、息を落ち着けてソファーへ腰掛けた。
今のは何だったのか。
きっと考えてはいけないことなんだと思いながらも、その視線を感じられずにはいられなかった。
「そういえば、工藤優作氏がここへ来たことは内密にして頂けますか」
「どうしてですか?」
秘密にするような相手もいないけれど。
思い当たるとしたらコナン君くらいで。
「彼は有名人ですから」
そう一言だけ返された。
あまり納得できる答えではないが、私は知らなくて良いということなんだろう。
何故彼がここに来たのか、彼が来るまでどうして私は部屋に詰め込まれていたのか、そして・・・この感じる視線は何なのか。
色々と聞きたいことはあったが、聞くだけ無駄なのは学習しているつもりで。
「・・・それで、私は何をすれば?」
大人しく次の指示を仰ぐことにした。
「特に何もありませんよ。敢えていうなら、ここに暫く居て頂くくらいでしょうか」
返ってきた答えは、想像していたものとは違って。
「何も無いなら、何故私を部屋に閉じ込めたりしたんですか」
「工藤優作氏に合わせる為、という答えでは納得して頂けないんですよね?」
分かっているなら言わないでほしい。
直接言いはしないが、その言葉を含んだまま彼を睨み付けた。
「でしたら、それについてはまたいずれ」
聞くだけ無駄と分かっていたのに。
聞いてしまった自分が悔しい。
「・・・部屋に戻ります」
そう言ってその場を立とうとすると、近くに立っていた彼が私の肩を押してそれを阻止した。
「・・・離してください」
「先程言いましたよね、ここに居てくださいと。これはお願いではなく、命令です」
そこに笑顔はある。
けれどそれは、いつもとどこか雰囲気の違うもので。自分の中にある警戒心が、これでもかと言うほど働いた。