第1章 出会い
「最後に連絡をとったのは、四ヶ月前」
バッグからスマホを取り出し、一通のメールを開いてコナンくんへ画面を見せた。
『ありがとう』
そう一言だけ書かれたメールは、確かに兄のメールアドレスからだった。
当時それを見た時は、お礼を言われるようなことをした覚えもなく、最後に連絡を取り合ったのも二ヶ月ほど前だった。
もしその時の返事だったとしても、それ程前のメールに今更返事をするだろうか。
そう疑問を抱きながらも、当時仕事が忙しかった私は冗談も含め「どういたしまして」とだけ返信した。
勿論、返信は無かった。
それから一ヶ月後、彼と音信不通になったことに気付いた。
メールをしても、電話をしても、反応が無い。
いつもなら遅くても三日以内には折り返し連絡があったが、それすらないことにようやく異変を感じた。
「でも連絡先以外、何も知らなくて・・・結局探すことができなかった。警察へ相談することも、前々から止められていたから・・・」
「止められていた?」
今まで黙って話を聞いていたコナンくんが口を開いて。
それと同時に、男性店員さんが注文した物を運んできて。
店内へ入ってきたときは姿が見えなかったように思い、思わず視線を向けた。
金髪で少し色黒の整った顔立ち・・・ハーフだろうか。
少し捲られた袖から見える腕が男らしさを感じさせた。
「お待たせしました。アイスコーヒーと、ミルクティーです」
目の前に差し出されたミルクティーへ目線を移すと、良い香りが鼻を抜けた。
・・・美味しそう。
久しぶりにそういった感情が芽生えた。
「ありがとうございます、いただきます」
優しい笑顔を向ける店員さんにどこか緊張しながら、それを一口含んで。
「・・・美味しい」
思わず、そう口から漏れた。
と同時に何故か涙も溢れた。
「如月さん・・・!?」
コナンくんが慌てて立ち上がって。
「ごめんなさい・・・っ」
自分でも何故泣いてしまったのか分からず、戸惑いながら手で涙を拭っていると、男性店員さんからハンカチを差し出されて。
「良かったら使ってください」
「あ、ありがとう・・・ございます」
ハンカチを受け取り、軽く押さえるように涙を拭いて。
でも、一度通り道を作った涙は、何度も何度も同じ場所を伝った。