第1章 出会い
初めて入ったのに、どこか懐かしさを感じ る。
珈琲の香りが、残っていた緊張を落としていって。
「いらっしゃい、コナンくん。・・・と、お連れ様?」
可愛らしい女性の店員が声をかけてきて。
会話の雰囲気から、コナンくんがよく来ていることが分かった。
「そうだよ、如月さんっていうんだ」
「は、初めまして・・・」
どうして喫茶店の店員に自己紹介しているのか分からなかったが、状況がそうさせたことだから仕方ない。
そのまま案内されたのは窓際の席。
ここなら毛利さんが戻ってきても分かりそうだ。
顔はネットなどで見ているから分かるはず。あまり自信は無かったが、コナンくんもいることだし、大丈夫だと自分に言い聞かせた。
「ご注文は何にされますか?」
「僕アイスコーヒー!」
「じゃあ・・・私はミルクティーで」
メニューに目を通す最中、最初に目についたものがそれだったから。
正直、何でも良かった。
きっと今の私は何を口にしても味なんてしないから。
「ところで如月さん」
店員さんがどこかへ行ったと同時に、コナンくんが話しかけてきて。
首を傾げて答えると、コナン君はそのまま言葉を続けた。
「良かったらおじさんへ依頼するつもりだった内容、聞いても良い?」
何を言っているのか。
普通の人ならそう思うのかもしれない。
ただ今の私は・・・普通ではなかった。
誰かに聞いてもらいたい気持ちはあった。
でも、誰でも良かった訳ではない。
それが少年相手になるとは思いもしなくて。
「・・・兄がこの世からいなくなった理由を、知りたいの」
重い唇を動かして話した。
「お兄さん?」
「兄というか、兄のような人だったんだけど・・・小さい頃からずっと一緒にいて、大人になってからも連絡を取り合ってた」
窓の外に見える街行く人を見流し、遠くを見つめた。
「そんな兄が行方不明になって」
私も兄代わりだった彼も、物心ついた頃から親がいなかった。
所謂施設で育ったのだが、彼は三つ歳が上だったこともあり、私よりも早く施設を出た。
何か職についていたのだろうが、それは教えてもらえなくて。
彼が施設を出て三年後、私も施設を出て働きだした。それからも何度も彼とは連絡を取り合っていて、互いの状況を報告しあっていた。