第48章 不可欠
「どうぞ」
ドアを開いて手を室内へ促すように向けられると、つられるようにゆっくりと部屋へと足を踏み入れた。
「どうも、如月ひなたさん」
「・・・え・・・?」
目の前に居たのは、この家の家主である工藤優作氏だった。
テレビなどでしか見たことがない予想外の姿に、唖然とする他なくて。
「一度貴方にも会って頂きたいと思っていまして、ね」
そう話す昴さんが私の横に並ぶ。
・・・何だろう、これから何かが起こる気がする。
それは良い予感とは言えなくて。
「初めまして・・・如月です」
そう小さく頭を下げるが、不思議と初めて会った気はしなかった。
寧ろどこかで会った気がする。
「・・・でも、どうしてここへ?」
彼に聞くのは筋違いで愚問であることは分かっていたが、聞かずにはいられなかった。
「先程彼が言った通り、貴女に会っておきたかったというのもありますが・・・」
そう言いながら工藤氏が私に顔を近付けて。
「ここは一応私の家ですからね」
それはごもっともな話なのだが、絶対にそれだけで無いのは分かっている。
彼の配偶者である有希子さんや、息子の工藤新一くんが組織の件について関わっていることを考えると、きっと彼も少なからず関わっているはず。
昴さんと情報交換をしていたか、もしくは・・・今後の何かを話し合っていたか。
でもそれを私に教えようとしない当たり、また自分は蚊帳の外なんだと悟った。
「・・・そうですね、失礼しました。遅くなりましたが、お世話になっております」
先にお礼を伝えるのが筋なんだろうが、そんなことを忘れてしまうくらいに、彼への親近感というのか、既視感に似たものを感じていて。
「いえ、こちらこそ」
少しすれ違うような返事に違和感を感じつつも、私が何をすべきなのかと昴さんに視線を向けた。