第48章 不可欠
「確かに」
最初からそう答えると分かっていた、とでも言いたげな表情を見せながら、覆い被さっていた体を退いてくれて。
「冷めないうちに食べてくださいね」
そう言って出ていく彼の背中を見つめては、やっぱり心の隅に罪悪感は残って。
彼はきっと私を思って全ての行動をしてくれている。
けれど、私にとっては言わばありがた迷惑状況。
・・・でも、正しいのはきっと彼なんだと思う。
だからこその罪悪感だろう。
サイドテーブルに置かれた昼食に目を向け、綺麗に作られたオムライスを確認すると、自然とそれに手が伸びた。
ゆっくりと一口運ぶと、それはいつも通り悔しい程に美味しくて。
・・・透さんのものには敵わないけれど。
「・・・透さん」
会いたい。
もう一度会って話がしたい。
今度はきちんと、二人で。
本当に彼が・・・安室透が存在しなかったのか。
確かめたい。
自然と出てくる涙が昼食に塩っぱさを足して。
小刻みに手を震わせながらそれらを胃へ詰め込んだ。
ーーー
日が暮れ始め、部屋の中も赤みを帯びてきた。
私はいつまでここに缶詰にされていれば良いのだろう。
そう思いながら部屋の中をウロウロと歩き回った。
その時、待ち望んだノック音が部屋に響き、急いでそちらへ視線をやった。
「お待たせしました、客人が来ましたので会って頂けますか?」
部屋に顔を覗かせた昴さんがそう告げて。
促されるように廊下へ出た。
あの時は緊張なんて感じなかったけれど。
改めて感じる妙なそれに、自然と体は強ばった。
「そんなに緊張されなくとも、貴女はよくご存知の人ですよ」
そういう彼の表情はいつもと違う気がした。
どこかその笑顔は・・・違和感を感じる。
横目でそう思いながら、その彼の横を歩いてついて行った。
向かっているのはどうやらいつもの部屋のようで。