第48章 不可欠
「・・・・・・っ!」
思わず彼の口を自分の手で抑え、彼のしようとしたことを阻止した。
正直、そこまでは無意識に体が動いた。
数秒間、その状態は続いてお互い無言で見つめあって。
「・・・二度もお預けをくらうとは思いませんでしたよ」
昴さんがクスッと笑いながら私の手をゆっくり取り払って。
・・・確かに朝もそうだったけど。あれは私が止めたわけではないし、そもそも彼のせいだ。
それでも僅かにくる罪悪感で彼から目を逸らし、何に罪悪感を感じているんだと自分を無意味に問い詰めた。
「そんなに嫌ですか?」
「嫌だから体が勝手に動いたんです」
本当は・・・そこまで嫌じゃないと思っている自分がいる。
昴さんが好きだとか、そういうわけではない。
ただその理由は分からなくて。
それが自分や彼の欲求を満たすだけのものだとしたら・・・それ程悲しいものはないから。
だから体が拒否しているのかもしれない。
「昨日は、そう見えませんでしたけどね」
「・・・ッ」
それを出されると弱くて。
キスでも、一度求めてしまったことは事実だ。
私の犯してしまった罪、というところか。
・・・いや、例えそうでも誰にも迷惑はかけていない。
そう思いながらも過ぎったのは透さんの存在で。
「お兄さんのことはこちらで調べますから、あの男のことはいい加減忘れたらいかがですか」
それが一番ベストだとは思った。
けれど、私の中で納得はできない。
例えそれで兄の末路について知れたとして・・・透さんのことを諦められるだろうか。
そういう問題でないことも分かってはいるが、関わってしまった以上、私の中で納得のいくように蹴りを付けたい。
「兄のことは自分でなんとかします。それと、透さんのことは諦めません」
昴さんに向けたそれは睨みとは違う、それでも決意を乗せた眼差しを向けた。
「貴方が一番分かってるはずですよ、昴さん」
その為に、私を助けたんでしょ。