第48章 不可欠
コナンくんが出て行ってから数十分後、再びノック音がすると、私の返事は待たないまま昴さんが部屋に入ってきた。
「昼食をお持ちしました」
この異様な状況に大きな違和感を感じながらも、今はそれを受け入れる他なくて。
小さなサイドテーブルにそれを置くと、何故か私の目の前に昴さんが立ち尽くした。
「・・・なんですか」
「いえ、ひなたさんが可愛くて見惚れていただけですよ」
相変わらず突拍子も無い言葉に、一々聞くのが馬鹿らしくなってきて、視線を背けようとしたその瞬間。
不意に思い出したのは、昨日も見たあのチョーカーの存在。
今はいつものハイネックで隠れていることを確認し、彼の目を見た。
問い詰めるなら今しかないと思い、意を決して昴さんの腕を掴み、それを全身の力で引っ張りベッドに倒すと、逃げられないよう彼の上へと跨った。
「大胆ですね」
クスクスと笑う沖矢さんを無視し、勢いよくハイネックに手を伸ばしてそれを剥いだ。
やはりそこにあったのは博士の作ったチョーカー型変声期。
間違い・・・ない。
「・・・これ、説明してもらえませんか」
昴さんを睨み付けるようにそう問い詰めると、笑顔は絶やさないまま、ハイネックを掴む私の手を掴み、そこから離された。
「探偵というのは、素性をあまり出さないものなんです、よ」
言い終わると同時に、体をひっくり返されて。
力で敵うはずもなく、馬乗りになっていた状態は一変して、彼が上になりベッドへ押し付けられる形となった。
「・・・ッ」
確かにその理由には一理ある。
コナンくんにも言える話かもしれない。
でも、何故か納得できなくて。
「声まで変える必要があるんですか?」
「いつどこで、誰が見てるか分かりませんからね」
そう言って当たり前のように顔が近付いてきて。
今日は追い詰められてばかりだと思い返しながら、前身に力が入った。