第48章 不可欠
彼に言われた通り、いつもの部屋へと移動をし、定位置になってきているソファーへ腰掛けると、この時ばかりは空気を読んだのか、向かい合うように沖矢さんも腰掛けて。
「単刀直入に話します」
沖矢さんから改まったようにそう切り出されれば、自然と体は身構えて。
膝の上に揃えられていた両手に、グッと力が入った。
「今日の夜、客人が来る予定です」
・・・客人?
「その方が来るまで、貴女には部屋に居てもらいたいんです」
なぜ、どうして、と疑問は溢れたが、聞いたところで教えてくれないだろうし、拒否権は無いのだろうから。
「・・・分かりました」
大人しくそう返事をするのが賢いと思えた。
「随分と素直ですね」
「私はいつでもそうですよ」
少し皮肉を含んだ言い方で返せば、また嘲笑うように返されて。
「その客人が誰か、くらいは聞いても良いんですか?」
その客人が来るまで・・・ということは、私にも会わせるつもりなんだろうから。
それくらいは教えてくれても良いのではないか、と思って。
「それは来てからのお楽しみですよ」
楽しそうに話す彼には苛立ちしか湧いてこない。
やはり彼は、私と透さんを苛立たせる天才と言えるだろう。
「・・・如月さん」
沖矢さんに向けていた睨みは、一瞬で解いて声を掛けられたコナンくんの方へと向けられた。
「その・・・大丈夫?」
彼の心配そうな瞳に、昨日までの事を言われていることを悟って。
そういえば、最近あまりきちんと話せていなかった。昨日別れたばかりなのに、彼とは随分会っていなかったような感覚で。
「・・・透さんのこと?」
具体的に質問を掘り起こすと、少し困ったように目を泳がせた。
彼なりに、気は遣っているようだ。
そこもやはり、小学生らしくはない。
「それもあるけど・・・」
言葉を濁した彼に、全てを引っ括めた質問だと分かった上での問い詰めに、少しばかりの罪悪感が生まれた。