第48章 不可欠
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「・・・・・・っ」
日差しが瞼の上から刺激をし、目が覚めた。
思いの外すぐに開いた瞼は、スッキリと寝たことを物語っていて。
「・・・ここ・・・」
ゆっくりと体を起こし、状況を確認する。
寝かされていたのは、借りているゲストルームでは無く、何故か沖矢さんの部屋で。
ここで寝るのは二度目か・・・と思いながら、ふと着ている服から漂った匂いに違和感を感じ、そこへ鼻を近付けた。
・・・僅かに感じる、煙草の匂い。
そういえば、昨夜のあの時にも感じた気がする。
今までそんなことは無かったのに。
ただ、部屋を見回してもそれらしい形跡はどこにもなくて。
さすがに部屋を物色することは気が引け、それは我慢することにしながら、昨日の出来事を走馬灯のように思い出した。
「・・・沖矢さん?」
そういえば、と彼の名前を呼んで存在を確認するが、その姿は無かった。
そもそも何時なのだろうかと時計を見ると、既に朝の九時が来ようとしていて。
こんな時間まで寝てしまった、と思うと同時に、昨夜寝たのは遅かったから、と心の中で言い訳をしながらベッドから降りた。
きっと彼はキッチンだろうな・・・と思いながら重い体を動かしては、そこへ移動して。
「おや、おはようございます」
「・・・おはようございます」
キッチンに入ると、予想通りそこに姿のあった彼はコーヒーを準備している最中だったようで、それをカップに注ぎながら挨拶を交わした。
「よく眠れましたか?」
その笑みが何を意味しているかなんて考えたくは無いが、小さく睨みながらも少しばかりは感謝の気持ちもあって。
「・・・ええ、あまり良い寝付きとは言えませんでしたけど」
「それは失敬。次回は気を付けます」
次があるなんてこちらは微塵も思っていないが。
「勘違いしないでください。あくまでも透さんの・・・ッ」
自分もコーヒーを貰おうとカップを取りに彼の傍を通ろうとした瞬間、肩を掴まれそのまま壁に体を押し付けられた。