第47章 黒い霧※
「物足りないのでしたら、足りるようにすれば良いだけの話ですから」
ぴくぴくと痙攣する体と、整わない息。
そんな私を嘲笑うように見下ろされて。
「やめる、なんて・・・言いませんよね?」
沖矢さんにそう問われ、数時間前の自分の言葉を少しだけ後悔した。
「・・・もう、無意味です」
続ける意味はない。
これ以上の馴れ合いは・・・互いにとって良くない。
少なからず、私はそう思っていたが。
「試してみないと分かりませんよ」
彼はそうでは無いようで。
「・・・んっ、ん・・・ぅ」
腟内から指が抜き取られ、全身の力が抜けきったところに、彼の唇が降ってきて。
さっきより僅かに深く感じるそれは、私の意識を全てそれに持っていかせた。
息継ぎの隙さえ与えないようなそれは、また透さんを思い出してしまう。
彼とのそれは、もっと気持ち良かったけど。
苦しさが頂点に達した時、彼の胸板をグッと押して離れるように訴えると、そこは素直に応えてくれて。
シャツのボタンをいくつか外す彼を薄ら月明かりが照らす。それは色っぽさを演出しているようにも感じた。
「・・・!」
そのシャツの隙間から見えた物に、ボーッとしていた頭は一瞬にして冴え渡った。
・・・阿笠博士に見せてもらった・・・チョーカー型変声期。
そうだ、あの時・・・どこかで見たと思っていたのに。何故今まで思い出せなかったんだろう。
いや、そもそも・・・何故彼が変声期なんかを・・・?
「沖矢さ・・・っ」
彼の顔に視線を向けようとした瞬間、指とは全く質量の違うモノが蜜口を押し開き、腟内を隙間なく埋めていった。
「い、あぁぁ・・・ッ!!」
苦しい、息も、腟内も。
透さんではない男の人を・・・受け入れてしまっている。
それは私が受けた喧嘩のような物なのに。
一気に押し寄せたのは、罪悪感や後悔ばかりだった。