第47章 黒い霧※
「彼のことをお考えですか」
「え・・・」
ふと、そんなことを問われて。
「・・・どうして、ですか」
「ひなたさんのことなら大体分かりますよ」
どうして貴方なんかに。
そう思いながら、見えているかは定かではないが、小さく眉間に皺を寄せながら少しだけ睨んだ。
「物足りなさそうにしていましたから」
クスッと笑いながら言われれば、その体を突き放したくなって。
別にくっ付いておきたかった、というわけでもないのだが。
「そう・・・ですね」
物足りないのか、と言われればそうかもしれないが、元々彼を求めているわけではないし、やはり私は沖矢さんでは無理なんだと再確認できた。
それだけで・・・もう十分。
「だから・・・退いてくれませんか」
これ以上続ける意味はない。
体は辛いが、我慢すれば良い。
透さんじゃなきゃ・・・意味が無い。
「それは致しかねます」
そう言って腟内に入ったままの指が、グッと奥まで届いて。
「やっ、あぁあ・・・ッ!!」
一段と高い声を響かせながら、背を少し反らせて。
少し冷めていた体の疼きは、再び悲鳴を上げるようにそれを求め出した。
「やめっ・・・沖矢さ・・・!!」
首を振って訴えるも、動きは止まるどころか速さを増していって。
同時に弱い部分も攻められれば、快楽の沼はすぐに目の前まで迫ってきた。
「い、ぁあ・・・や・・・ッ!!」
抑えられない声と欲望が、貪欲に漏れ出てくる。
口で嫌だとは言っても、本当にそうなのか・・・自分の中で答えを探すまでになっていた。
「あ・・・っい、ぁ・・・!!」
頭が真っ白になって。
あの沼へと落ちていく。
落ちていく度に、抜け出せなくなるその場所へ。
「あぁぁああ・・・ッ!!」
彼の手によって落ちてしまった。