第47章 黒い霧※
「ん、あぁ・・・っ!やっ・・・だ、め・・・!!」
耳も攻め続けられるまま、一度動きを止めていた腟内を埋めている指が再び動き出すと、我慢していた声は糸が切れたように出てきて。
「・・・っあ、や・・・!!」
知らぬうちに、密着していた沖矢さんの体に腕を回していて。
彼の肩へ顔を埋めるようにしながら、そこへ甘い声を吐き出した。
・・・その時にほのかに感じた、煙草のような匂い。
彼が吸っている姿は見たことはないけど。
「ふ、ぁ・・・ッ」
優しい。
とにかく触り方が優し過ぎて。
透さんが優しくなかったわけではないが、物足りなさにも似たそれが余計に体を疼かせる。
体もきっちり透さんに調教されてしまっていたことに、今こんなところで気付いてしまった。
「・・・沖矢、さ・・・ん・・・ッ」
息絶え絶えに彼の名前を呼ぶと、ちらりと視線を向けてくれて。
その方向へ顔を向けながら、無言でキスを迫った。
別に沖矢さんのキスが欲しかったわけではない。キスがしたかったわけでもない。
・・・そこで初めて、透さんを忘れようとしている自分もいることに気付いてしまって。
心の隙間を代用品で埋めることはいけないことだと思いながらも、それに彼を利用しようとしている自分が・・・心底醜い。
沖矢さんに迫ったキスは、黙って応えてくれた。
優しく絡み合うそこに、愛が無いというのが嘘のようで。
沖矢さんと触れ合う度、思い出したり、求めてしまうのは・・・やっぱり透さんだった。
拗れ過ぎたこの愛は、最早それ以外の物ではないかとすら思えてくる。
依存・・・とまではいかないけれど。
私の中の大切な人とは一体どういう存在だったのか、その意味すら自分の中で問い詰めてしまうくらいに、脳内会議は色んな議論で揉めていた。
「・・・ん、は・・・ぁっ」
唇を離し、ゆっくり瞼を上げたところでキャンドルの火が弱まっていることに気付いた。
差し込む月明かりの方が部屋を明るくしているようで、途端にそれは寂しさを作った。