第47章 黒い霧※
「・・・ん・・・っ」
するりと入ってくる舌は優し過ぎるくらいにゆっくりと絡められていって。
罪悪感は勿論あった。
恐らく感じる必要なんてないんだろうけど。
「・・・おき、や・・・さ・・・!」
当然のように服の隙間から忍び込んでくる手を掴みながら、顔を少し離して彼を睨んだ。
「今だけは、流されてみてはいかがですか」
掴んでいる手は当然の如く無意味で、止める力なんて無いまま膨らみまで到達して。
「・・・っ、あ・・・」
流されたくなんてない。
そう思っているはずなのに。
「沖矢、さ・・・ッ」
押し倒されるようにソファーへ転がされると、彼がそこへ覆いかぶさった。
「い、や・・・っ!」
その体勢が、数時間前の出来事を思い出してしまうようで。
何より大きく感じたのは何故か恐怖だった。
相手は・・・透さんだったのに。
「やめて・・・!!」
半ば叫ぶように彼の体を押す。
ビクともしないそれにまた恐怖が増すようで。
「ん、ぅ・・・っ」
再び触れ合った唇、絡み合っていく舌。
部屋に響くリップ音と、舌が絡む度に鳴る卑猥な音が、静かな部屋を強調しているようで。
長い、長いキス。
優しく溶かすようなそれに、いつの間にか感じていた恐怖は無くなっていた。
「・・・っは、ぁ・・・」
ようやく離れた唇は、寂しさを感じるくらいまでになっていて。
どうしてこんなに・・・安心してしまったのだろう。
それよりも謎だったのは、感じた恐怖の理由・・・だけど。
「やはり、彼にだとしても殺されることは怖かったようですね」
見透かしたように言われれば、妙にその言葉に納得してしまって。
・・・そう、確かに口では殺されても良いなんて言ってはいたけど。
あの場から逃げてしまったことは紛れもない事実。
それが、彼に殺されることから逃げたという何よりの証明で。
それはきっと・・・そこに恐怖があったからだ。