第47章 黒い霧※
「眠れないんですか」
「・・・!!」
突然暗闇から声がして。
驚き過ぎて体を大きく震わせながら、その声がする方へ目を向けた。
「驚かせてすみません」
そう言いながら暗闇から姿を現したのは沖矢さんで。
彼以外はありえないことなのに。
突然のこととはいえ、驚き過ぎた自分がどこか恥ずかしくて。
「・・・沖矢さんこそ」
こんな時間に、こんな所へ来るなんて。
「僕はコーヒーでも飲もうかと」
この夜中に・・・?
「眠れなくなりますよ」
「貴女が眠るまでは寝れませんので」
・・・まるで私を監視しているような物言いに、どこか引っ掛かりを感じて。
一つの可能性を考えては、ない話ではないかと自己解決し、一旦頭の片隅に置いておいた。
「眠れないようでしたら、少しお話でもしませんか?」
そう言って彼が両手に取ったのは、コーヒーカップ。
どうせ眠れそうもない上、今あの部屋に戻りたいとは思えなくなってしまって。
「・・・お付き合いします」
「ありがとうございます」
彼のお礼を聞きながら、コーヒーの準備を始めて。
慣れてきているこの動作が、少しばかり虚しい。
出会いが違っていれば・・・私は沖矢さんを好きになる可能性もあったのだろうか、なんて無意味なことまで思ってしまって。
いずれにせよ、透さんと会っていれば・・・出会い方は違っても、私は彼を愛しただろう。
そんなことを考えながら、できたコーヒーをカップに注ぎ、それをいつもの部屋へと運ぶと、ゆっくり定位置になってきているソファーに腰掛けた。
後ろをついてきていた彼は、てっきりいつものように向かい側に座ると思っていたが、何故か今日は隣に座ってきたことに少しばかりの警戒心を露わにして。