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【安室夢】恋愛ミルクティー【名探偵コナン】

第47章 黒い霧※




「彼に連絡でも取ろうかと思ったんですか?」

スマホを片手に、ドアの前に立つ私の元へゆっくり歩み寄ってきて。

笑顔はそのままなのに。
何故か怖くて、後ずさってしまった。

「ち、が・・・」

スマホはただ、ふと覗いただけ。
それだけだったのに。

沖矢さんの顔を見ることができなくて。
逸らすように視線を床へと落とした。

「そんなに怯えなくとも分かっていますよ」

優しく頬に、沖矢さんの指が触れて。

予期せぬ出来事に体は小さくピクっと震えた。

「おやすみなさい」

耳元で囁かれ、静かに彼は部屋から出て行った。

状況を理解するまでに時間が掛かり、暫くそこに立ち尽くしたまま、彼の遠のいていく足音を聞いて。
それが聞こえなくなると、一瞬で力は抜けて床に座り込んだ。

怖かった。

今思うのはその感情だけ。

でも、それは透さんに対してなのか、沖矢さんに対してなのかは分からなくて。

考えたって、いつものように答えなんて出るはずないのに。寧ろ、考える力さえ残っていないのに。

暫く呆然と座り込んだまま、遠くを見つめた。

それからどうやって布団まで辿り着いたかは分からない。

気付けばいつの間にかそこへ居て。

眠ることもできず、考えることもできず。

ただ息をするだけの生き物になって。

ただただ、時間が過ぎるのを待った。


ーーー


ふと時計に目をやると、時刻は深夜の二時を過ぎようとしていて。

眠れる気配は無い。

この胸の奥にかかった黒い霧のようなものが晴れるまでは、落ち着いて眠ることもできそうにない。

とりあえず、渇きを訴える体に水分を与えようと重い体を動かして。

真っ暗な廊下を手探りで進みながら、台所まで向かった。

コップを手に取ると、一杯の水を注いでそれを胃へと流し込んで。
少しは落ち着くかと思った体は、渇きこそ収まったものの、ざわつきは保ったまま私の中に大きく居座っていた。



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