第46章 近づく
「あのスマホに何か仕掛けられているのか心配されているようでしたら、それは心配無用ですよ」
部屋から出てきた沖矢さんはそのままドアを閉め、私の肩をその大きな手で優しく包み込んだ。
「失礼かとは思いましたが、貴女のスマホは定期的にチェックさせてもらっていました。勿論、彼が忍び込んだ後も」
悪趣味、と一瞬思ったものの、それは彼らだって命がかかっているから。
私という言わばお荷物を抱えているんだから、それくらいはやって当然か、と自己解決して。
「貴女は暫く電源も入れられていなかった様子ですが。とりあえず、彼からの電話はたまたまでしょう。理由は分かりませんけどね」
一先ず、一番恐れていたことは気にしなくてよくなったことに、安堵のため息が出た。
それを確認してか、肩を掴んでいた沖矢さんがくるりと私の体を反転させ、私の部屋へと向かうように軽く体をその方向へ押し始めた。
「念の為、そのスマホは預からせて頂きます。とりあえず部屋に行きましょう」
・・・何を焦っていたんだろう。
そう思わせるくらいに彼は落ち着いていて。
彼の手が触れている肩が、妙に熱く感じた。
ゲストルームまで来ると、沖矢さんが先に部屋へと入っていって。
迷わず向かったのはベッドに放置されたスマホの元だった。
「・・・?」
あれ、私・・・そこに置いたって言ったっけ・・・。
出入口付近から見守る私を放置したまま、沖矢さんはスマホを手に取っては操作し始めて。
暫く画面を見つめた後に浮かべたのはいつもの不敵な笑み。
それにゾクッとした悪寒のようなものを感じながらも、どこか彼という強みも感じてしまって。
沖矢さんと関わる度、沖矢昴という人がどんどんと分からなくなっていく。
知れば分からなくなり、自分も壊れていって。
私は本当に・・・彼を信じていて良いのだろうか。