第46章 近づく
部屋に戻り、逃げ込むように布団へ潜った。
そういえば、財布や透さんのスマホが入ったカバンをどこかに忘れてきてしまったな、と今更ながらに思い出して。
財布は良いとしても・・・透さんのスマホをきちんと返せなかったことに、少し心残りのようなものがあって。
彼の車に忘れているだけなら良いのだけれど。
ふと思い立ち、暫く電源の入れられることの無かった自分のスマホを久しぶりに手にして、恐る恐るそれの電源を入れた。
これで透さんに連絡することはもうないだろうけど。
「あ・・・」
そう思いながら立ち上がったスマホに届いたメールをチェックしていると、休んでいる間に幾つか届いていたとある人からのメールが目について。
「・・・梓さん・・・」
確か透さんも・・・心配してるって言ってたっけ。
『お元気ですか?良かったらランチでも食べに来てくださいね!』
『何かあったら、私でも良ければいつでも相談にのりますよ!』
『今日は安室さんもお休みだったので寂しかったです・・・。元気になるの待ってますね!』
彼女らしい文章がそこにはあって。
梓さんには悪いことをしてしまった。
ようやく慣れてきた頃に・・・ポアロを離れることになってしまったのだから。
「・・・透さんは・・・どうするんだろう」
彼は逃げも隠れもしないんだろうから、きっとそのままポアロにいるんだろうけど・・・私はそうもいかない。
きっと今度は沖矢さんから正式にダメだと言われるのだろう。
彼の許可なんて必要ではないが、彼らにこれ以上迷惑をかけるのはごめんだから。
「・・・・・・」
梓さんへのメールの返事も、もう安易にはできない。
透さんはともかく、組織の人間が私は死んだと思っているのであれば、私が生きている痕跡を残すことは良くない、ということくらいは分かっているから。