第46章 近づく
「今後のことですが、事が落ち着くまでは何が何でもここへ居てもらいますよ。こちらの身も危うくなるんでね」
食後の紅茶を差し出されながらそう告げられて。
どうせ行く宛ても無いが。
彼らの協力者として動くことも、もう無いと思う・・・それでもここに居て良いのだろうか?
「・・・それ、は・・・」
彼らは・・・組織の人間達は、本当に私が死んだか、上手く逃げたと思っているんだろうか。
「安心してください、彼は餌に掛かっていますから」
「・・・!」
今となってはもう意味の無い言葉だけど。
・・・私の望みは消えたわけではない。
「それに・・・準備も整いつつあります」
「・・・透さんが、組織にいる理由が分かる・・・というアレですか・・・?」
沖矢さんが口角を上げたのを見れば、それが当たりだということは嫌でも分かった。
今、そしてこれからの私に何ができるのかは分からないが、少しでも透さんを・・・組織から離すことができるなら・・・。
・・・私を消そうとしたところを見ると、可能性は低いけれど。
「貴女はまだ、彼を組織から抜け出させたいと・・・思っていますか?」
改まったように、テーブル越しに顔を近付けながら、そう問われて。
答えなんて、分かってるくせに。
「勿論です。その為に・・・助けたんですよね?」
彼の口からそう言われたのだから。
「ええ」
期待を裏切らないその笑みは、それだけで何を意味しているのか段々と分かってくるようだった。
「でも、彼のことは忘れることをオススメします」
・・・前言撤回。
やっぱり分からない。
「・・・言っている意味が分かりません」
「貴女の望みは彼を組織から抜け出させること、ですよね?彼の元に戻りたい・・・では無い」
だから、何だと言うのか。
それは彼を忘れることには通じない。
彼を忘れてしまえば、透さんを組織から抜け出させる理由なんて・・・無くなってしまう。