第45章 盗出す※
「彼が拳銃自殺したことを確認する為に・・・今日は呼ばれたようです」
たったそれだけの為に。
私にとってはそれくらいの情報。
「・・・なるほど」
沖矢さんのその一言を聞くまでは。
その声は、どこか嬉しそうにも聞こえて。
いや、楽しんでいる・・・と言った方が正しいかもしれない。
彼が・・・楠田陸道が拳銃自殺したことに、一体どういう意味があると言うのだろうか。
「それだけ、ですか?」
「・・・楠田についてはそれくらいですが・・・、以前ここに押し入ってきた偽物の沖矢さんは、透さんだったことを告げられました」
それについては、薄々勘づいてはいたけど。
「沖矢さんから私を離し、始末しやすくしたかったそうです」
あの時彼に告げられた言葉が脳内に走る。
「・・・これで、彼のことは嫌いになりましたか?」
再び体を洗う手を動かし始めた沖矢さんにそう問われて。
私が・・・透さんを嫌いに・・・?
「それは・・・無いです」
不思議と、あんなことをされた後でも、透さんのことは嫌いになれなくて。
最後の囁くような「ありがとう」が、私の耳にこびり付いて離れない。
恐らくそれを忘れられるまでは、彼のことはずっと好きなままだと思う。
「私は透さんを、生半可に愛していたわけではないので」
彼にも告げた通り、私は心から彼を・・・。
「偽りだと告げられても尚、ですか」
・・・分かってる。
彼からの愛が無かったことなんて。
それでも・・・。
「それでも愛しているんです」
手をギュッと握り締めながら、噛み締めるようにそう答えた。
きっと死ぬまで、透さんのことを忘れることはないと思う。
それ程まで、私は狂おしいほど彼に心を奪われていた。
「・・・では、僕が忘れさせて差し上げましょうか?」
そう言った彼の手が膨らみに添えられて。
「沖矢、さ・・・っ!」
咄嗟に手を掴むが、耳を下から舐め上げられればその力は途端に抜けてしまった。