第45章 盗出す※
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「じゃあ、僕は博士の家に泊まるから」
「あ、コナンくん・・・!」
車から降りて、阿笠邸に向かおうとするコナンくんを呼び止めて。
振り返って足を止めた彼に、半ば無理矢理作った笑顔を向けた。
「・・・ありがとう」
「どういたしまして」
改めてお礼を伝えると、にこっと笑った彼はそう返事をして足早に去って行ってしまった。
「貴女はこのまま乗っていてください。僕が運びます」
「じ、自分で歩けます・・・!」
特に怪我をしたわけでもない。
・・・少々、人目に触れて良いような格好ではないが、歩くのは門から玄関までだ。
沖矢さんに言い返したところで彼の真剣な目に気付き、その先の言葉を飲み込んでしまった。
「言いましたよね?傍を離れないでください、と」
たかだかこの距離なのに・・・と思う私は、やっぱり危機感に欠けるんだろうな、と思って。
「・・・分かりました」
降りようとして開けたドアを閉め、そのまま沖矢さんの運転で車庫へと向かった。
車を止めたところですぐに沖矢さんが降り、助手席を開けてくれて。
そこへ差し出された手に、らしくないと感じながらも、大人しくそれに手を添えた。
「・・・きゃっ・・・!」
車から足を出し、立ち上がろうとしたところで沖矢さんに手をグッと引っ張られ、彼に寄りかかってしまう形になった。
「お・・・沖矢さん・・・ッ」
何をするのか、と少し怒りを含んだような声色で彼の名前を呼びながら視線を向けて。
「・・・本当に無事で良かった」
「・・・っ」
苦しいくらいに強く沖矢さんに抱きしめられた。
心からそう思っているような、いつもの彼の雰囲気ではない言葉に、何故か鼓動が早くなって。
「・・・沖矢さん・・・?」
暫くそのまま時間が過ぎた。
何も言わない彼に少し不安になり、声を掛けたが返事は無くて。
初めて、沖矢さんの本当の姿を見れたような気がした。