第45章 盗出す※
・・・いや、まさか。
彼がそんなことするはずない。
そもそも、この日本で警察官でもないのに銃なんて。
そう言い聞かせながら、沖矢さんに小さく視線を向けた。
「・・・沖矢さんはどうしてあそこが?」
彼には発信機も何も手掛かりはないはずだ。
ましてやあんな廃工場、闇雲に探して見つかるものでもない。
「貴女が病院に向かうと言ってから随分経ちましたが、それ以降連絡がありませんでしたので。ボウヤに連絡して発信機のことを聞き、一緒に貴女を探しに出掛けた・・・というわけですよ」
心配、という言葉を使わない辺り、彼なりの配慮は感じた。
「・・・どうして、助けたんですか」
身勝手な質問だとは分かっている。
でも、あのまま透さんに殺してもらえれば・・・。
「何一つ、貴女の願いを叶えないまま、死んでも良いのですか?」
・・・それは。
未練が無いといえば、嘘になる。
けど、一つはもう無理だと悟ったことだし、もう一つも・・・果たしたいようには果たせなくなった。
「それに、貴女へ誓ったはずですよ」
赤信号で車が止められる。
それと同時にこちらへ視線を向けられて。
「命をかけてお守りする、と」
心臓がドキッと音を立てて。
確かに・・・そんなことも言われたっけ。
私はそこまで求めていないと、思っていたけれど。
いざ助け出されてみれば、安堵している自分もいる。
それは、自分の命が惜しかったから?
それとも、まだこの世に未練があるから?
・・・もしくは・・・。
「・・・すみません。それと・・・ありがとう、ございました・・・」
視線を落とし、震える声で不本意では無くなったお礼を伝えた。
やっぱり私は・・・兄のことも、透さんのことも諦めたくない。
「・・・でも、もう沖矢さん達と一緒に居るわけには・・・」
透さんの事務所には行けなくなった。
家に戻れば必ず組織の目が光る。
バーボンに知られている以上、いつ組織内に工藤邸へ住んでいることが知れ渡るか分かったものではない。
これ以上、彼らに迷惑は・・・掛けられない。