第44章 掠めて※
「んッ・・・ぁ・・・」
舌が絡まる度、工場内に音が響いた。
事務所の室内とは違う、反響しやすいこの場所では、その音が何度も何度も耳に入ってくるようで。
「・・・っは・・・」
離された唇は、愛おしそうに糸で繋がっていて。
・・・最後くらいは透さんが良い、なんて思ったけれど・・・バーボンだとしても、彼で終われるなら。
それでも・・・良い。
「透・・・さん・・・」
そう思っているはずなのに。
やっぱり求めているのは彼なんだと。
痛いほどにそう感じて。
「ひなたさん」
「・・・!」
優しく名前を呼ぶ彼は、紛れもない安室透で。
「貴女が望むなら、安室透で抱いて差し上げますよ」
その声色も、笑顔も・・・今まで何度も感じてきた安室透そのもので。
「・・・ッ」
やっぱり、彼に出会ってしまったことは間違いだった。
ただそれだけは分かった。
私が死んでも、彼は何とも思わないかもしれないが・・・できればそうであってほしいと思った。
誰かの記憶に残らないまま、ひっそりとこの世を去れたら。
「・・・っや・・・!」
服を捲りあげられ、素肌が冷たい空気の中に晒された。
体温はどんどんと奪われて、体の震えは恐怖からか寒さからか分からないものになっていて。
「ここ、弄られるの・・・お好きでしたよね」
下着を上にズラし、膨らみをそこから取り出されて。蕾を手袋をつけた手で摘まれれば、いつもとは違う感覚に、体が過敏に反応した。
「んっ、・・・やぁ・・・!」
甲高い声は、響きやすい建物内に何度も響き渡った。
響いてきたそれは、自分の声じゃないような気さえしてきて。
「ひぁ・・・ッ!!」
蕾を口に含まれ、舌先で転がされて。
吸われては離され、舌全体で舐めあげられて・・・。
その度に体はビクビクと小刻みに反応を示し、快楽一つ一つを拾い上げていった。