第44章 掠めて※
「最後のヒントです。・・・コーヒーのお味はいかがでした?」
・・・コーヒー?
確かにあのカフェではコーヒーを飲んだけれど・・・。
「・・・・・・!!」
まさか。
・・・よく考えれば男性が一人、あの場にいた。
「やっと気付きました?あの時コーヒーを運んだ店員は・・・僕だったんですよ」
そうか、その時に椅子か何かに盗聴器を付けられたんだ。
・・・彼には黙っているようにと言われていた情報は、最初から全て筒抜けだったということか。
「まさかあんなに上手く情報が手に入るとは思いませんでしたから。FBIが嘘の情報を貴女に伝えている可能性もありましたし、それを確認する為に今回ベルモットに協力して頂いたんですよ」
・・・でも、そこまでして欲しい楠田の情報って・・・。
「楠田陸道が拳銃自殺した、という確証を得るためにね」
私の心の中の質問に答えるように、そう教えてくれて。
確かに楠田陸道は拳銃自殺したと聞いたが・・・わざわざそれだけの為に・・・?
組織の人間の末路を知る為にそうしたのだろうか。
・・・にしては面倒が過ぎる気がした。
彼の考えも行動も、何一つ理解出来ることが無くて。
「さて、話はこれくらいにして・・・。もう行きますね。彼女を始末しなければいけませんから」
淡々と吐かれるそんな言葉が、心臓に抉りこんでくるような感覚に襲われた。
覚悟はしている。
寧ろ、私の口が永遠に塞がれた方が都合が良い、なんて思い始めて。
そうすれば、沖矢さんやコナンくん、FBIの人達に少しでも迷惑を掛けなくて済む。
・・・これで、良かったんだ。
「ちょっと待ちなさい」
ベルモットに背中を向けて歩み始めていた透さんに、彼女が静止を求めた。
その声にピタリと動きを止めたバーボンの表情は、読み取れなくて。
「・・・貴方まさか、逃がす気じゃないわよね」
ベルモットから吐き出される言葉や声色は終始冷たいもので。
体の奥底から嫌な予感というものを沸き立たせた。