第44章 掠めて※
「楠田の、どの情報か・・・知りたそうな顔ですね」
相変わらず察するのは早くて。
そう言うところは透さんと変わらない。
・・・いや、バーボンが透さんだったから・・・か。
「いいでしょう、貴女とは最後になるかもしれませんから、教えて差し上げましょうか」
いつだったか彼の言った、その時が・・・来たのだろうか。
薄く脆い決意を心の片隅でしながら、食い入るように彼を見つめた。
「安心してください、情報を漏らしたのは哀れなFBIの方達ですから」
FBIの・・・方達?
それはキャメルさん以外にもいるということ・・・?
「おや、気付いていなかったのですか?」
私の疑問をまた見透かしたように笑みを作りながら、言葉を続けた。
「ヒントをあげましょうか。
その一。先日、米花百貨店で貴女と会ったのは、偶然ではありません」
・・・それは、なんとなく考えれば分かる。
でも、ジョディさんの話を聞いたのは、女性客しかいないカフェだ。
あそこで話を聞くとしたら女性に化けるか・・・もしくは・・・。
一つの仮説を立てては、煙草を吸いながら私達の会話に耳を傾けるベルモットの方へと視線を向けた。
「ヒントその二。ベルモットはカフェにいませんでした、周りの方々も一般客です」
私が立てていた推理は、音を立てて崩れ落ちていった。
あの一般客のどこかに彼女がいたなら・・・と思ったのだが。
だとしたら盗聴器を付けられていたくらいしか考えられなくて。
「盗聴器・・・と、思っていますか?確かに聞いたのは盗聴器からですが、貴女自身やFBIには仕掛けていませんよ」
・・・また、だ。
考えを読まれた上に、FBIの人達の話をしている彼は、殺気立っているというか・・・。
心から彼らを憎んでいるように見える。
それは・・・貴方が組織の人間だから・・・?
「そろそろ、分かりましたか?」
見下すような形で見つめられれば、思考回路なんてものは勝手に停止してしまって。
もう私には、考えられる出来事なんて残っていなかった。