第43章 二枚舌
「・・・そうですか。何かあればすぐ、僕に言ってくださいね」
「は・・・はい」
僕に、の部分を強調する辺り、言葉の裏に沖矢さんの存在が見えたような気がした。
『屋外で?』
聞きそびれていたコナンくん達の会話が再び耳に入り、そこへ意識が移って。
『そう・・・ジョディ先生の服装を確認する為に・・・』
『私の服?』
『うん、顔は今までに撮った写真で変装できるけど、今日着てる服は、そうはいかない』
・・・変装?
『屋外に来させた方が全身も見えて隠し撮りしやすい・・・そして、変装の準備が整ったら、ジョディ先生に澁谷先生の容体が急変したって電話して・・・病院におびき出しキャメル捜査官の気を引いて、ジョディ先生と離れるように仕向けて・・・』
『私に変装したベルモットが、まんまと貴方から情報を聞き出したってわけね』
『す、すみません・・・』
ジョディさんに・・・変装・・・。
ということは、さっき会ったジョディさんはもしかして・・・。
「ひなたさん?」
「は、はい・・・!」
・・・ダメだ、彼らの会話に集中しきっていた。
この会話を聞いていることは、少なくとも透さんにバレてはいけないのに。
気付けばいつの間にか車は、人通りの少ない場所に止められていて。
「本当に大丈夫ですか?」
そう言いながら、透さんの手が頬の方へゆっくりと伸びてきて。
もしその手がイヤホンに触れてしまったら・・・。
この会話を聞いていることがバレたら・・・。
「・・・ッ!!」
その恐怖が一気に押し寄せた瞬間、無意識に彼の手を振り払っていた。
その瞬間は目を瞑ってしまっていたが、その行動を取ってしまったと気付いた時、我に返り彼に目を向けて。
純粋な、驚いた表情。
と、同時にどこか寂しげにも見えた。
「・・・すみません」
そう言って笑う彼の表情を見て、また心臓が悲鳴を上げるようだった。