第43章 二枚舌
『お酒を飲むなら時間帯は夜・・・その頃になると、ジョディ先生の携帯が電池切れすることを知ってたんだよ』
『見張られていたのね・・・』
・・・それが透さんだとしたら、最早彼は二人いるのではないかとすら思ってくる。
一体、一人でどれだけの行動をしているんだろう。
彼と一緒に居ない時は、彼が何をしているのか全く知らない自分が、段々と情けなくも思えた。
『し、しかし・・・何で私の携帯を・・・?』
『FBI捜査官なら誰でも良かったんだよ。あの夜の澁谷先生が何かの事故に遭えば、彼女の携帯に履歴が残ってるその捜査官も、ジョディ先生と一緒に現場に呼び出される羽目になるから』
キャメルさんの問いかけに、コナンくんが答えて。
・・・待って、それじゃまるで澁谷先生があの日、事故に遭うことを知っていたみたいな言い方だ。
『なるほど・・・情報を聞き出すターゲットは、最初から私と一緒に来るFBI捜査官だったのね・・・。でも夏子はあの夜、神立さんに公園の階段から突き落とされて大怪我を負ったけど・・・もしあの事件が起きなかったら・・・?』
ジョディさんの質問に、固唾を飲んで。
スカートを知らぬ内に掴み、その手の力が入り込んでいることに気付くのはもう少し後だった。
『車で引いて大怪我させるつもりだったかも・・・バーボンは車に乗ってたって言ってたし』
・・・嘘、透さんはそんなことするはずない。
例え組織の仕事だったとしても、透さんは・・・そんなこと・・・。
「どうかされました?」
「!!」
突然、運転中の透さんに話し掛けられ、肩をビクッと震わせた。
「顔色が良くないようですが・・・車を止めましょうか?」
「い、いえ・・・っ、大丈夫です・・・。ちょっと昼間のことを思い出してしまって・・・」
あの時のトラウマが、あんな形で蘇るとは思いもしなかったけれど。
言い訳として使えたなら、不幸中の幸いだったのかもしれない。