第43章 二枚舌
「では、お送りしましょうか」
「あ・・・はい」
さっきの運転とは違い、今度はどこかのんびりとした運転に見えて。
私としては、一分一秒でも長く居られるように感じるから、その方がありがたいのだけれど。
「・・・?」
ふとポケットに感じた違和感に気付き、そこへ手を突っ込むと、コナンくんに返しそびれていたイヤホンが出てきて。
「・・・・・・」
イヤホン越しに聞こえてきた透さんの声が脳内で何度も何度も駆け巡った。
彼の言う『誤解』というのは・・・やっぱりそう言うことなんだろうか。
私がやろうとしていることは・・・絶対に不可能なことなんだろうか。
無謀だということも無茶だと言うことも、不可能に近いことは分かっていた。
だけど、彼が本当に悪い人間というものには見えなくて。
「・・・!」
指先に触れたイヤホンが、僅かに振動しているように感じた。
・・・音が、きている?
コナンくん達が今どこにいるのかは知らないが、もしこれをあの阿笠博士が作ったのだとしたら、キロ単位で音を拾ってもおかしくはない。
リスクはあるが、明るい昼間とは違い、今は暗闇につつまれた夜で、透さんは運転中だ。
多少は私から気が逸れているはずだと、さり気なくポケットに入れていたイヤホンを耳につけた。
『ベルモットは私達がこの病院に来ることを知ってて、待ち伏せてたってわけ・・・?』
ジョディさんの声。
ということは、まだコナンくんはFBIの人達と一緒にいるんだ。
『ああ・・・全てはバーボンとベルモットの思惑通りに動いちまったってわけさ・・・』
・・・コナン・・・くん・・・?
にしては少し雰囲気が違うようにも感じる。
声はコナンくんに似ているが、話し方や声のトーンがいつもの彼ではない。
それに、気になるのは・・・バーボンとベルモットという名前に続けられた、思惑通りという言葉。
バーボンは透さんだが、ベルモットって・・・。