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【安室夢】恋愛ミルクティー【名探偵コナン】

第43章 二枚舌




「・・・すみません」

無意識にもう一度謝ってしまって。

「・・・・・・」

静かな時間が暫く流れた。

透さんの顔を見るのが怖くて。

早く車を出してほしいと願いつつ、必死にその時間を耐えた。

「・・・ひなたさん、こちらを向いて頂けますか」

落ち着いた声でそう言われるが、何故か返事をすることも顔を上げることもできなくて。

ただただ俯いて、スカートを握る手を強くする他無かった。

「ひなたさん」

諭されるようにもう一度呼ばれて。

流石に何度も彼の言葉に背くことはできず、恐る恐るゆっくりと、視線と顔を透さんに向けた。

「・・・ッ!」

突然顔を両手で包まれ、透さんの方へ引き寄せられると唇に柔らかい感触を受けて。

その時は急な事で目を瞑ってしまったが、唇に触れたのは透さんのそれだということはすぐに分かった。

「・・・っん・・・」

顔を掴む透さんの手の上に自身の手を重ね、もどかしいそのキスを受け入れた。

本当に触れるだけ・・・でも唇で啄むように、何度か離れてはまた触れて。

その度に体が疼くようで、重ねる手に力が入った。

「・・・ひなたさん」
「・・・はい・・・」

限りなく顔は近い距離を保ったまま名前を呼ばれれば、ゾワっとした何かが全身を駆け巡った。

「どうして車を降りたんですか」
「・・・さっきお伝えした通り、澁谷先生の容態が気になって・・・」

まだ彼と目を合わせることはできなくて。

いつもの少しだけ冷たい手は、私の頬の熱を徐々に奪っていった。

「・・・あまり、無茶はしないでください」

そう言いながら顔を包んでいた手はゆっくり離され、透さんはため息混じりに運転席にもたれかかった。

無茶・・・?
私はただ車を降りただけ・・・だが。

それが彼にとっては無茶となるのだろうか。
それとも、今回のように命令に背くことを指しているのだろうか。



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