第43章 二枚舌
「ああ、そうか。君のような下っ端捜査官には降りてこない情報ってわけですね?」
「何言ってんだ。FBIは常に情報を共有して・・・」
「キャメル!」
キャメルさんが反論しかけた時、病院の入口の方からジョディさんが顔を出して。
・・・澁谷先生、無事だったんだろうか。
透さんには車を降りるなとは言われたが、絶対にとは言われていない。
こんなこと本人に言えばまた怒られてしまうかもしれないが、何よりも早く彼女の容態が知りたくて、車を降りて彼らの元へと走っていった。
「ひなたさん・・・!」
約束を守らなかったからか、少し驚いた様子で透さんに名前を呼ばれれば、途端に申し訳無さが溢れてきて。
「すみません、澁谷先生の容態が気になって・・・。どうでした・・・?」
「大丈夫、彼女なら問題ないわ」
そう言うジョディさんに、何故か違和感を感じた。
・・・何かが、彼女と違う気がして。
「そんなことより、私から離れないでよ!」
そう言いながらキャメルさんの腕を引き、病院内へと入って行った。
なんだろう、この嫌な予感は。
さっきのジョディさんからは、異様な雰囲気を感じた。殺気とは違うが、得体の知れない何かが彼女を覆い隠しているような。
「澁谷先生の無事も分かったことですし、押し掛けても今僕達にできることはありませんので、行きましょうか」
「あ、はい・・・」
透さんの顔に笑顔が無いのを見れば、さっきの行動はまずかったのではと今更ながら反省して。
・・・いや、まずいのは分かっていて行動したんだ。
色々不安を残したまま、透さんの車に乗り直した。
「・・・透さん・・・」
「なんでしょうか」
その声色は少し怒っているようにも聞こえて。
鼓動が少し大きく早くなるのを感じながらスカートの裾をぎゅっと握った。
「・・・勝手に車を降りて・・・すみませんでした」
「謝らなくて大丈夫です」
その言い方はどこか突き放されたような気がして、心臓が悲鳴を上げるくらい苦しくなった。