第42章 不信感
「・・・?」
手に何か違和感を感じ、そっと視線を向けると、コナンくんがさり気無く私に何かを手渡した様子で。
何も言わず視線も合わせない彼を見て、透さんに気付かれてはいけないものなんだと悟った。
「ねえ、ちょっとゼロ・・・」
「?」
「いや、安室の兄ちゃん・・・ちょっと・・・」
そう言いながら透さんの手を引いて離れた隙を見て、握らされた物に目を向けた。
そこにはワイヤレスのイヤホンだと思われる物があって。
今ここでこれを渡すということは、付けていろということなんだと思い、髪を整えるフリをしながらそれを耳に装着した。
コナンくん達は部屋の壁沿いの方まで離れ、透さんは彼の側にしゃがんでいて。
『ねえ、安室の兄ちゃんってさ・・・』
「!」
そこから聞こえてきたのは、数メートル先にいる彼らの声。
小声で話している様子ではあったが、ハッキリとそれはイヤホン越しに聞こえてきた。
・・・でも、どうして。
『敵・・・だよね?・・・悪い奴らの・・・』
真剣な声でコナンくんがそう尋ねた。
それが組織をのことを指しているのはすぐに分かった。
・・・が、質問の内容がすぐに理解できなくて。
透さんが・・・悪い奴らの敵・・・?
それはつまり、FBIのような存在・・・ということ?
「・・・・・・」
暫くの沈黙。
姿は見える位置にいるのに。
もっと遠くに感じて。
声は聞こえるのに。
透さんを感じることはできなくて。
『・・・フッ』
沈黙を破るように、透さんが鼻で笑った声が聞こえてきて。
『ゼロ・・・』
『・・・え?』
コナンくんの不意をつかれたような声。
『僕の子どもの頃のあだ名は本当にそうだったんだ』
また、透さんのものではないような、どこかワントーン低い声色で。
どこか不安になるようなその言い方は、心臓をキツく締め上げられるような感覚にさせた。
『君は少々、僕のことを・・・誤解しているようだ』
続けた透さんの言葉が・・・一気に私を奈落に突き落とすようだった。