第42章 不信感
「でも、夏子の言ってたのって本当だったのね」
「え?」
「ほら、右上に書いてあるイラストよ」
そう言いながらジョディさんが指さしたのは名前の横に書かれた花丸のマーク。
「アメリカじゃ百点満点の時は『Excellent』って書き足されるけど、日本じゃ花丸だって彼女言ってたから」
「ほー・・・」
「それだけか?」
納得した様子の警部さんだったが、透さんは真逆の様子で。
「え?」
「それだけなのか?FBI」
挑発的な物言いにこちらの方が動揺してしまって。
・・・また、言い合いになったらどうしようか、と。
「それだけって?」
「ドイツ系の君はどうだ?」
「ん?」
「この写真から読み取れる情報は、それだけかと聞いているんですよ」
透さんの顔には笑顔があるのに、それは威圧的であり、優しいものでは無かった。
FBIへの敵意が剥き出しの状態で。
その言葉に乗せられたように、キャメルさんが改めて写真を食い入るように見つめた。
それにつられるように、私も写真へ視線を戻して。
その時にやっと、一つの違和感に気付いた。
「・・・そういえば、澁谷先生ってアメリカ留学されてましたよね?」
「ええ。その留学中に彼女と仲良くなったのよ」
今更ながら、ジョディさんと澁谷先生の知り合うきっかけを聞いて納得した。
ただ、FBIの人と知り合うようなきっかけってなんだろうか。
・・・いや、今はそんなこと考えてる暇は無くて。
「日本じゃ正解に○をつけるらしいから、一番上の答案用紙の採点は間違っていないとしか・・・」
「・・・?」
写真を手に取り、まじまじとそれを見つめながら答えるキャメルさんに疑問を持った。
私が気付いたことは、FBIなら・・・何となく察するんじゃないかと思ったから。
「ふっ・・・はっはっはっ!」
珍しく声を上げて笑う透さんに驚き、みんなの視線が集まった。
その笑いすら、挑発的な物に見えてきてしまって。