第42章 不信感
「少しは落ち着きましたか?」
「・・・はい」
まだ気持ち悪さは残るが、目眩や吐き気は落ち着いてきて。
ゆっくり閉じていた瞼を持ち上げると、目の前には片膝をつき、心配そうに軽く笑みを浮かべる透さんがいて。
彼の姿が見えるだけで安心するようだった。
「・・・すみません、迷惑ば・・・っん」
視線を落としながら謝りかけた時、透さんの人差し指が唇に当てられ、動きを封じられた。
「言わない約束です」
言い聞かせるように言われれば、心臓がドクンと音を立てて。
彼にとっては今飲み込んだ言葉も、迷惑をかけたくなかった、という意味と同じに捉えられているようだ。
視線が混じり合い、お互いその言葉を認識しあった事を確認すると、封をしていた指はゆっくりと外された。
「如月さん、大丈夫・・・!?」
心配そうな表情でジョディさんとキャメルさんが駆け寄ってきて。
「もう・・・大丈夫です。ご心配お掛けしてすみません」
まだ万全とは言えないが、どうにか笑顔を作って誤魔化した。下手な嘘だと言うのは、自分が一番良く知っている。
「そう・・・?まだ顔色が良くないようだけど・・・」
「ジョディさんはまだ話があるでしょうし・・・何なら、私が家まで送りましょうか?」
心配そうにするジョディさんの横で、キャメルさんがそう提案してくれた。
個人的にはここを離れたい気持ちもあったが、それ以上に透さんの傍に居たいという思いが強くて。
「君と二人で、というのは僕が許可しません」
まだ私は何も言っていないのに。
キャメルさんの言葉へ、すかさず透さんが割って入って。
「アンタが許可するかどうかの問題ではないだろう」
「彼女がこうなっている原因を知らない君には、少なくともお任せできませんね」
・・・ということは、透さんには私がこうなってしまった理由が、分かっているということなんだろうか。
まあ、透さんなら分かっていてもおかしくはないけれど。