第42章 不信感
「まさか彼女にそれを指摘され、カッとなって・・・」
「そ、そんなことしてませんよ・・・!」
・・・なんだろう、息が・・・苦しい・・・。
「・・・・・・ッ」
段々と呼吸が荒くなり、目眩もしてきて。
あの時の事が・・・怖いくらいに鮮明に蘇ってくる。
途端に足の力が無くなり、崩れるようにその場に座り込んだ。
「・・・如月さん?」
私の異変に気付いたコナンくんが、心配そうに駆け寄ってきてくれて。
・・・また、心配をかけてしまっただろうか。
「大丈夫?顔色悪いよ・・・」
「・・・大丈夫。ちょっと・・・気分が悪くなった・・・だけだから・・・」
無理矢理笑顔を作ってそう応えて。
コナンくんに焦点を合わせようとするが、視界が歪んでそれができなくなっていることに気付いたのは、その時だった。
「・・・っ・・・・・・」
歪む視界に足元が揺れているように感じ、吐き気が襲ってくる。
それを抑えるように手で口を塞ぎ、目を閉じた。
「・・・大丈夫ですか」
優しく語りかけるような口調で聞こえてきたのは、透さんの声。
目を開けるのが怖くて、薄目で声のした方へ目を向けるが、その姿を捉えることはできなくて。
「と・・・るさ・・・」
「ここに、いますよ」
彼を求めるように、小刻みに震える手を空に差し出すと、その手を少し冷たい手に包まれて。
・・・どこかで・・・同じ言葉を聞いたような気がする。
どこ・・・だったっけ・・・。
「少し、失礼します」
そう断りを入れながら横抱きにされ、そのまま部屋の隅の方に置かれた椅子へ座らされて。
「目は閉じたままで。深呼吸ができますか?」
透さんの手が瞼の上に被せられる。
瞳から完全に光が遮断された為か、耳の感覚が鋭くなって。
透さんに言われた通り深く深呼吸を数回繰り返し、息を整えた。
「上手です、そのまま呼吸を整えることに集中してください」
瞼を覆っていた手が離され、指だけで頬を撫でられる。
少しひんやりしたその感覚が、気持ち良くて。