第42章 不信感
「そういえば貴方・・・」
彼が話している最中、透さんが何かを思い出したように話に割って入って。
コナンくんに向けていた視線は透さんへと移動した。それは私だけではなく、警部さんを含めFBIの人達もそうだった。
「以前、澁谷先生に告白してフラれた事があるそうですが」
「か、彼女から聞いたんですか!?」
明らかに慌てた様子で菅本さんが尋ねて。
「いえ、他の先生方に聞いたんですよ。以前、澁谷先生からストーカー被害の依頼を受けてここを訪れたときにね」
だからここに入ってきたとき、迷わず職員室に向かったんだ。
あの時は何とも思わなかったが、今になって納得して。
透さんの言葉を聞いた菅本さんは、いつの間にか職員室の入口に集まっていたここの先生と思われる人達に視線を向けて。
みんな彼と目を合わせないのを見る限り、殆どの先生はそれを知っていると思われた。
「だから貴方は、要注意人物だとマークしてましたよ」
「まさか夏子のストーカーって貴方だったわけ!?」
ジョディさんが食いかかるように菅本さんへ詰め寄って。
嫌でも彼女からはピリついた空気を感じる。
二日前に会った時とは別人のように、少し冷静さを失っているようにも見えて。
・・・気持ちは痛いほど分かるが。
「逆です、逆!自分は彼女をよからぬ輩から守っていた方で・・・」
「守ってた?」
「ええ・・・。彼女が無事家にたどり着くまで、殆ど毎日護衛してたというか・・・。まあ、護衛といっても、彼女に気付かれないように跡をつけて、じっと見守るだけなんですが・・・」
そう話す彼は何処と無く照れているようにも見えて。
・・・あの時を思い出すようで少し気分が悪い。
「たまに彼女がこっちの気配に気付いてキョロキョロする姿が、何とも愛らしくて・・・守ってあげなきゃって実感するというか・・・」
「それをストーカーって言うのよ!」
耐えきれなかったようにジョディさんが声を荒らげて。
・・・駄目だ、もう忘れたと思っていたのに。
あの時・・・いつだったか暗闇で現れ、私の腕を掴んだ男の顔が、脳内でチラついた。